推薦のことば
「電子版康煕字典」
財団法人 斯文会理事長 石川忠久
爾雅に始つた漢字の字書は、説文解字を經て清代の康煕字典をもつて頂點をなし、現在に至る約三百年、その地位は搖ぎない。字形に混亂が起ると「康煕字典に歸れ」という動きが出ること、つい先年の國語審議會の答申に見られる通りである。以後、多少の誤りが指摘されるものの、康煕字典が漢字の權威であることに變りはない。ただ、我々が見るのは活字本であり、今日コンピュータの時代になつて初めて本來の姿が精細な畫像として見られるようになった。しかも個々の文字が今昔文字鏡と連繋して容易に探し出せる。本物の康煕字典文字を見ずに侃々諤々と論じられることの多かつた漢字が、これからは證據を目の當りにして檢討できるのである。無駄な論議が減つて、學問の進歩に貢獻するのが今囘の工具であると確信する。
「推薦の辞」
京都大学名誉教授 興膳 宏
『康熙字典』といえば、全ての漢字字典の範型として今日なお高い権威を維持し、道光版・安永版といえば、その最も優れたテキストとして信頼されている。それがDVD化されて、広狭大小さまざまな次元での検索が可能になる。
字書を引くとは、部首を手がかりに画数を数えて、ページを繰りながら徐々に親字にたどり着く作業だが、デジタル検索は目指す項目がいきなり目の前に現れる。さながら「漢字の国」に引きこまれて、彷徨する感じである。私も「漢字の国のアリス」になった気分で、『康熙字典』の行間にもぐりこみ、錯綜した迷路の中で、数々の冒険を楽しみたい。